Baran group: Total Synthesis of Tagetitoxin, J. Am. Chem. Soc. 2020, in press
今回は、JACSに掲載されたBaranグループのTagetitoxin合成について。
特に難しいところはありません。
まず、furfuralにスルホンアミドを反応させ、イミンを得る。
これにアニオン種を付加して生じた成績体のシリル基を除去することで、シアノ基を脱離させる。
続いてTFE(トリフルオロエタノール)を作用させ、再びシアノ基の脱離によりエステルを得る。
次は、Achmatowicz反応とLuche還元。
フランと一重項酸素の反応で[2+4]が進行し、ペルオキシドが生じる。
続いて還元剤としてジメチルスルフィドを作用させ、O-O結合を切断する。
次にアルデヒドに対する分子内アルドール反応で、5員環化が進行する。
この時の立体化学は、生じるヒドロキシ基とエステルがsynとなる生成物を与える。
これは、アルデヒド酸素とエノールプロトンが水素結合を形成するような遷移状態を経由するからだと考えた。
生じたヒドロキシ基を、PCNB基(para-cyanobenzoyl: この略しかた初めて見た)へと変換した。
共役エノンをLuche還元条件でダウンのヒドロキシ基へと導いた。
この立体選択性は、1,3-ジアキシャルとなる位置にあるエステルを避けるように発現したと考えた。
次は、転位とジヒドロキシ化まで。
TCDI(Thio Carbonyl Di Imidazole)がヒドロキシ基と反応した化合物を加熱し、Claisen転位型の反応を進行させる。立体は保持で進行。
次にブロモを脱離基とする試薬で、Sに置換基を導入。
続いて四酸化オスミウムでオレフィンをジヒドロキシ化。
このときSが酸化されないのは、共役したメトキシカルボニルで電子不足となっているからだと推測。
最後は、環化と酸化度の調整。
NBSに似た試薬で6員環化を行う。
このときの立体化学は、オレフィンが母核に対して立つと、この母核を避けるように試薬が接近するために単一の立体選択性が発現したと解釈した。
生じるブロモ基をn-Bu3SnHとAIBNの条件で還元し、続いてアミノアルコールをアセトニドで保護。
以降の変換は言うことないので省略。