最近の【全合成・反応機構】 "Total Syntheses of Rhodomolleins XX and XXII" (3)
Total synthesis of Rhodomolleins の続き(3)
Hanfeng Dingらのグループ
Yu, K.; Yang, Z.-N.; Liu, C.-H.; Wu, S.-Q.; Hong, X.; Zhao, X.-L; Ding, H. Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 8556.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/anie.201903349
5工程目:シクロプロパン環の開環とアセタール形成
ケトンとエステルのLewis塩基性を考慮すると、エステルのカルボニル基へ先にTMSOTfがたかると推定できます。
そのため、16のエステルカルボニル基がTMSOTfで活性化され、28となります。続いて、三員環のひずみ解消を駆動力として開環が進行します。
このとき28を立体的に書き表すと、TS29と書けます。
一般的に、開裂する2つの結合は、立体電子効果的にアンチペリプラナーであるときにE2反応が進行するとされています。シグマ結合とシグマ*結合が相互作用するため。
TS29を見ると、開環の際に脱プロトン化される水素原子が3つあると思います。結果として、Ha水素が脱離して30を与えています。確かに、自由回転できるHa-C結合は、開裂する結合とアンチペリプラナーであることが分かります。一方で、のこりのHbとHc-C結合はそれぞれ、開裂しうる結合と平行でないため反応が進みません。また、嵩高いアリール基が分子下面に配向しているTS29の配座をとるために、30のアリール基まわりの幾何異性はE体となったと考えました。
続くプロトン化は、速度論的に立体的に空いている分子上面から進行すると考えました。しかし、生成物は水素原子が分子下面に配向しているので、続く31、32でエピ化が起こるとしました。
続いて、野依先生の条件による、アセタール化。
Noyori, R.; Murarta, S.; Suzuki, M. Tetrahedron 1981, 37, 3899.
doi:10.1016/S0040-4020(01)93263-6
安定なTMS2Oの形成を駆動力として、アセタール化が進行します。
まず、ケトン32に対してTMSOTfがLewis酸として作用することで、33となります。続いて、33に(TMSOCH2)2が攻撃して34、TMS2Oが脱離し35を与えます。
最後に、アセタール環の形成で、27へと導かれます。
1反応だけで思ったより長くなってしまった。